Ýさんは、とあるイベントで知り合った60代の方。
とても和やかで明るく、話しやすい素敵な方です。
そんなÝさんが「ピアノやってみたいんだけど…」と相談されたのは、昨年の春のこと。
聞くと、ずっとやってみたくて電子ピアノも購入済み。
テレビの「大人のピアノ」の番組などを観て独学でチャレンジするも、なんだか満足せずだったそうで。
「オンラインレッスンで、やってみましょうか」
私の提案に、ピアノと向き合う再チャレンジをすることにしたÝさん。
大人の方がピアノを始める場合、まずモチベーションが大切です。
*楽譜を読まないと弾けない→んなわけありません。そりゃ、多少は知識は必要です。ですが、小さい子のレッスンとは違くのが大人レッスン。なにより、指を動かすのが先でいいんです。
*まずは指練習をしっかりやらないと好きな曲は弾けない→確かに大事な練習ではあります。しかし大人の生徒さんの場合は「この曲弾きたい!」をできるだけ優先です。パッション大事!
と、いうわけでサザンオールスターズの「真夏の果実」が弾きたいとのリクエスト。
楽譜ですが…アレンジャーさんによってかなり違います。
なので、その楽譜をさらに私が初心者用にアレンジして変えました。
柔軟さも大事よ。
それから毎月2回、30分のレッスン。
Ýさんはまだバリバリ働いていらっしゃるし、ボランティア活動もされています。
時間がない中でも、左手が思うように動かない時も。
「両手で弾けるようになりたい」
その思いが伝わってきました。
大人の生徒さんの場合は、お話で心ほぐしたり(つい話し込んでしまうことも笑)、自信を持ってもらうっことを大切にしています。
だって、まず「弾きたい!」を実行に移しているだけで素晴らしいじゃないですか!?もうそこで拍手ですよね。
そして、12月。
ついに、最後まで両手で通せるようになったÝさん。
合格基準は「間違えなかったか」ではありません。
その演奏が、その音が自分のものになったか?
これが、伝わってきたら合格です。
間違えたって、いいんです。
「Ýさん!合格です!!はなまる!ここまで本当に、よく頑張りましたね!!」
心の底からの拍手とともに。
ああ心が満ちる。胸いっぱいの演奏でした。
初心者さんで、楽譜の音だけでなく長さ、変わったリズムに何度も苦戦していました。
でもね。
すべてを繰り返し繰り返し弾いて、ご自身のものにされた。
素晴らしい。
後日、聞きました。
あの後、思い出したそうです。そうだった…と。
Ýさん、幼いころからずっとピアノが弾きたかった。
朝起きると、壁のストライプの模様を指で鍵盤に見立ててトントン鳴らしていたそうです。
その音で、ご両親はÝさんが起きたと気づいていたとのこと。
「でも、ピアノは高価だし習いたいって言えなかったの」
「だから、今回弾けるようになって思い出したの。私、ずっとずっとピアノがやりたかったんだって」
そうおっしゃって、Ýさんは涙を流されました。
良かった。
Ýさんは、幼い頃のご自分の願いを叶えてあげられたのですね。
小さいÝさんが喜んでいるのがそこに見えるようで…私も泣いてしまいました。
ピアノが、過去も変える。人生を満たす豊かなものになる。
この仕事をしてきて、確信しています。
「次は、弾き歌いをしてみたいなと思って。ビートルズとか?」
そう言ってにっこり笑うÝさん。とっても素敵です。
一緒に伴走できる幸せを、今日も。
ね。音楽って、いいよ。
*写真は掲載許可済みです。左がÝさん。
合格したÝさんに、拍手を。


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